歯列矯正でなぜ歯が動くのか?仕組みと理由を解説
歯並びや噛み合わせを良くするために矯正歯科では歯列矯正を行いますが、そもそもなぜ歯並びが綺麗になるのでしょうか?
また、なぜ歯列矯正は時間がかかるのでしょうか?
そのような疑問について、本ページではわかりやすく解説をしていきたいと思います。
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そもそもなぜ歯が動くのか?
皆さんご存知の通り、歯は硬いので手で押してみても簡単に動くことはありません。
一部では、「矯正治療を行わずに歯並びを綺麗にする」といった動画や記事がアップされていることもありますが、一般的には、歯科医院での歯列矯正以外に歯並びを綺麗にすることはできません。では、なぜ矯正治療では歯を動かすことができるのでしょうか?
結論としては、骨が溶けることと再生とを繰り返すので、その活動を計算して動かすことで歯並びを綺麗にすることができるからです。
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歯が動く仕組み
イメージとしては、お店に並ぶ行列をイメージしてみてください。
自分が行列に並んでいるとして、自分の前に並んでいる人が徐々に自分の方に寄ってきたらどうしますか?恐らく、少し距離を取って後ろに後ずさりしますよね。
そのように、歯も適度な距離を取ろうとして動いてくれるのです。ここで、「自分より後ろの人がつっかえていたら後ずさりできないのでは?」と考える方もいらっしゃるのではないでしょうか?
そのような方はとても鋭いです。結論としては、矯正医はその部分も計算していますので後ろの人、つまり奥歯から動かすことで列が整いやすいようにしています。
詳しくは以下で説明致します。奥歯から動かす理由
先程の行列の例ですと、(歯が)動きたくても自分の後ろの人がつかえていたら後ずさりできないという問題があります。
そのため、歯列矯正では列の一番後ろである奥歯から動かしていくのが基本です。奥歯を後ろに動かし、その隙間に次の歯を動かしていくことで、でこぼこの歯並びを綺麗に整列させるようなイメージです。
抜歯する理由
一般的には、列が詰まっているほど抜歯を含む治療が有効になります。こちらも行列の例で説明します。
歯列矯正では、列の一番後ろの人(奥歯)から動かすのが基本と説明しましたが、抜歯することは列の人数を減らすことと同じことになります。列に並んでいる人の一部が列から外れることで、その空いたスペースに詰まっている人が動きやすくなるのです。
ただし、当然ながら一度抜歯した歯は元には戻りません。
抜歯には抵抗のある方もいらっしゃいますので、カウンセリングでは治療計画に抜歯が含まれるか、抜歯する場合はどの歯を抜歯するのかについて、きちんと確認をしましょう。
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歯列矯正に時間がかかる理由
歯列矯正で歯を動かせる量は、平均で1ヶ月あたり0.3mm程度です。
歯の動きやすさについては個人差もありますが年齢による影響が大きく、子供の方が動きやすく、歳を重ねるにつれ徐々に動きにくくなります。それに対し、矯正をする歯のでこぼこの幅は平均4.0mmとされています。
単純計算をすると、この幅を動かすだけでも最低1年以上はかかることになります。
加えて、でこぼこの歯を動かすために他の歯から動かしていく期間もかかりますので、歯列矯正には平均1年半~3年程度の期間を必要とするのです。矯正の期間を短くする方法
では治療期間の短い治療方法や、矯正にかかる期間を短くしたりすることはできないのでしょうか?
方法としては、以下のものがあります。部分矯正
部分矯正は、でこぼこの幅が少ない場合や動かす歯の本数が少ない場合に適用することができます。
歯を動かす幅と動かす対象が少ないため、6ヶ月~1年半ほどの期間で治療を完了することができます。
ただし、比較的軽度の症状に対して行う治療ですので、適用できない場合があります。外科的治療
外科的治療とは、麻酔をかけて全ての歯の間にメスで切り込みを入れる方法です。
歯のでこぼこの幅が大きい場合にも短期間で治療できますが、この方法については推奨していない矯正医も多く、注意が必要です。加速矯正装置の使用
加速矯正装置とは、歯に装着する矯正装置と平行して使用することで、歯が動く活動を活発化してくれる装置のことです。
歯が動くスピードを早くすることで、治療期間の短縮が期待できます。
近赤外線による光治療タイプや、装置が振動して細胞活動を促す振動タイプなどがあります。しかし、現在日本では認可を得ているものがなく、一般的な矯正装置と比べて開発されてからの歴史も浅いため、使用を推奨するかどうかは矯正医の判断によります。
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まとめ
歯が動く仕組みについて、いかがでしたでしょうか?
できれば楽に、抜歯をせず、短期間で綺麗な歯並びを手に入れたいところですが、歯列矯正が大変な作業になってしまうのにはこのようなエビデンスや理由があるのです。
世界中を含むどの矯正歯科でも魔法のような治療方法は存在しませんので、仕組みやデメリットを正しく理解して、矯正治療にのぞみましょう。
仮に歯を左側に動かしたい場合、矯正器具の力を使って歯が左側に動くように力をかけます。
その場合、まず歯の左側を支えている部分の骨が溶ける働きをし、動かしたい歯を受け入れるような隙間を作ってくれる状態になるのです。
なぜそのような動きをしてくれるかというと、歯の衝撃を和らげるクッション(歯根膜といいます)が、歯が近づいてきたことでクッションの余白をもっと取ろうとして起こる現象です。